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付け句・明治以降 [付け句かるた]

霜降りる頃より里の土橋かな  東洋城
(か)刈田の末に眠る山々  寅日子(寺田虎彦)

鎖したれど流石に春や通り町  蓬里雨(小宮豊隆)
(て)天水桶に浮ぶ輪飾  寅日子

あすよりはみちのくの人や春の雨  東洋城
(な)なだ雪のこる西側の山  蓬里雨

けふあすのけふの中なる胡蝶かな  東洋城
(い)いつはえるとも瓜の種蒔く  寅日子

雪の蓑一つ見ゆるや峡の橋  東洋城
(そ)空はからりと晴れ互る朝  蓬里雨

炭竈とのみ道もなき深雪かな  東洋城
(か)野の果てに黒き海原  寅日子

昔から名古屋の城の長閑かな  東洋城
(あ)赤土山に燃ゆる陽炎  寅日子

水団扇鵜飼の絵なる篝かな  東洋城
(た)旅の話の更けて涼しき  寅日子  
  
凩の一日吹て居りにけり  団友
(か)烏もまじる里の麦まき  乙由

白梅の白に負けたり干し大根  柳叟
(か)霞むもいまだ新道の末  迢空

うらゝかや染めわけて濃き湖の色  井泉水
(ゆ)湯の香に惜しむ春のせはしき  善麿

夢のあと日のさす櫻しづかなり 井泉水
(つ)燕の巣ものこる一軒  善麿

先生を迎へて涼し夏山家  迢空
(ふ)富士を真向きに円座出し置く  茅秋
(先生とは柳田国男のこと)  

花蘇枋曙町に住ひけり  東洋城
(ね)猫の子呉れる塀の張り紙  寅日子

短夜の旅寝なりしが別れかな  蓬里雨
(か)蚊帳の釣手に浜の松風  寅日子

文鳥や籠しろがねに光る風  寅日子
(へ)塀の上より春の遠山  東洋城

露けさの屋根には藁の子馬かな  蓬里雨
(ふ)ふすまで腹をあたゝめる秋  寅日子

簾越に緑吹入る温泉の二階  蓬里雨 
(は)葉を折りそへて盆の枇杷の実  寅日子

うなだれて灰汁桶覗く柘榴哉  寅日子
(ひ)昼鳴く虫の一つのどけさ  東洋城

コスモスやつがね上げてもからめても  寅日子
(ね)猫さまたげぬ籬の秋風  東洋城

旅なればふどし洗ふや秋の水  東洋城
(く)くわつとあかるき稲妻の庫裏  寅日子

花蘇枋曙町に住ひけり  東洋城
(ね)猫の子呉れる塀の張り紙  寅日子

かはかはと蛙妻よぶ夜となりぬ  蓬里雨
(み)水草生ふる沼のそここゝ  東洋城

さみだれや傘の影なす隅田川  梓
(き)胡瓜吸ひこむ河童の渦  梓

唯祈る月明くとも暗くとも  虚子
(そ)その盛り待つ黄菊白菊  柳叟

大根の花や雲雀は雲の中  虚子
(京)京へ流ゝ春の里川  靑々

鳰がゐて鳰の海とは昔より  虚子
(あ)芦の苫屋の芦の風景  たかし

水団扇鵜飼の絵なる篝かな  東洋城
(た)旅の話の更けて涼しき  寅日子

荻吹くや崩れ初めたる雲の峯  子規
(か)かげたる月の出づる川上  虚子

寺斗りかくれぬ丘の若葉かな  みき雄
(こ)声ほのほのと時鳥鳴  幹哉

鎖したれど流石に春や通り町  蓬里雨
(て)天水桶に浮ぶ輪飾  寅日子

春深きこの水ありてつゝし園  鳳羽
(の)長閑に並ふ遠近の山  閑窓

梅が香や茶は除け者の裏書院  竜洲
(き)客の好みに任す干海苔  井月

 

つばくらめ付け句 [付け句かるた]

つばくらめ付け句(野草選)

木にのぼり青葉の闇へ消えゆけり  黙壷子
 ぬぎ捨てられしくちなはの衣   律子

バーベルの蜻蛉止まりて傾きぬ   野草
 股からのぞく豊洲の市場     徳海

まず出でて直ぐなる風や秋近し   夏霜
 黄昏ながく百日紅散る      律子

鈴の音の鍵を浴衣の袂かな      黙狂
 すっかり忘れし昼の言ひ合ひ   柚

大仏の眉を涼しく長谷の空     夏霜
 滴る山を光背にして       默狂

透明になりて新樹の中を行く    和子
 黒揚羽ゆきかふ風の眉      佐太郎
 
二階より細き素足の下りきたる   結
 葭戸を開けて拭き掃除する    律子

春光のペンキ塗りたて触れるべし  徳海
 お花畑に足踏み入れて      夏霜

秋澄むやあらぬところに昼の月   黙狂 
 母を追ひかけ父の行くなり    結

きげん良き病児に似たる小春かな  和子
 背高のっぽの皇帝ダリア     柚

ダークスーツ颯爽としてつばくらめ 佐太郎
 佐々木小次郎はちまきしめて   和子

やはらかき卯の花腐し軒の猫    流水
 目は瞑るとも耳は欹てて     半眼

紫陽花のつぼみに昏き石畳     律子
 茶店の主は姉さん被り      流水

君の名を句会に知るや節分草    柚
 鬼のやうとも福のやうとも    黙狂

どの子にもその子の笑窪桃の花   野草
 うぶ毛ひかりし喜寿の福耳    菱玲

デザートは一片の梨病院食     淳郷
 また越え行かん小夜の中山    夏霜

冬の陽を一粒づつに砂時計     黙狂
 春の山辺に小鳥群立つ      夏霜

師走風のらくろ通りはぐれ犬    淳郷
 カウンター席奥が定位置     野草

青空を流れる水脈や枯木立     律子
 列島長く春遠からじ       佐太郎

風花の四次元ぬけて来たりけり   流水
 後すがたやついて行きたき    和子

やはらかき卯の花腐し軒の猫    流水
 目は瞑るとも耳は欹(そばだ)て 半眼

小暗きに氷菓舐め世を遠くせり   半眼
 当り棒もてせわしげな下駄    徳海

星ひとつ動かず花火二万発     黙狂
 鼻緒の色もこだわりのうち    柚

連れそひし九月の風の祇園町    夏霜
 枕の下ぞ水の流れる       佐太郎

ポケットに木の実の騒ぐ女学院   黙狂
 餌を求め里へ来る熊おやじ    徳海

竹箒真っ直ぐ立てて山眠る     徳海
 焚火に芋の焼ける頃合ひ     黙狂

熱燗の通夜の笑ひを許されよ    結
 酌み交はしつつ眼鏡をはずす   和子

ボート屋の固き施錠や浅き春    柚
 ペンキ塗り立てあと二、三日   徳海

涅槃図のいづくに母の泣きおはす  結
 ゆいよゆいよの声も聞こゆる   流水

肩越しにあだ名呼ばるる葱坊主   結
 俳号を受け今や大御所      德海

葉桜や柩のくぎは打たぬまま    結
 また共に見ん画家となる夢    半眼

蚊柱や役にも立たぬ男たち     流水
 扇子巧みに飛ばす賭事      德海

草の花座ればこつと尾骶骨     結
 一目散に蜥蜴飛び出す      夏霜

河馬の目の二つを見せて秋の水   野草
 笑つてゐるよぽぽの稔典     流水

ぎいと捩づ鯉の背鰭や秋の水    半眼
 紅葉を乗せて水輪ひろがる    默狂

吟行の句を懐に冬ざるる      流水
 師走の巷影を歩ませ       佐太郎

おらが春書斎に活けし猫柳     佐太郎
 午後の客へのまんじゅうを買ふ  結

風光るビルのガラスにビルの影   結
 アンパンかじるティファニーの前 默狂

頂吹く風やはらかき彼岸かな    和子
 河津桜のいまをさかりに     佐太郎

花冷えや末摘花の鼻の先      和子
 マスクをすれば皆美人なり    夏霜





   

付け句かるた [付け句かるた]

百人一首は下の句を憶えていることが前提ですが、この遊びも、連句の脇句、或は付け合ひの付け句を憶えていなければなりません。遊び方は百人一首と同じです。読み札は、立句(発句)と脇句(付け句)を続けて読み、取り札は、脇句(付け句)のみの札です。

読み札
雪ながら山もとかすむ夕かな  宗祇
取り札
(ゆ)ゆく水とをく梅にほふ里  肖柏

以下、同様にして遊びます。

昔にもかへでぞ見ゆる宇津の山  鴨長明
(い)いかで都の人につたへむ  飛鳥井雅経
(伊勢物語第九段の「駿河なる宇津の山辺のうつつにも夢にも人に逢はぬなりけり」を本歌としている。巧妙な掛詞を配した究極の連歌。)

ときは今天が下しる五月哉  光秀(ときはいまあまがしたしるさつきかな)
(み)水上まさる庭の夏山  行祐(みなかみまさるにはのなつやま)

海くれて鴨の聲ほのかに白し  芭蕉
(く)串に鯨をあぶる盃  桐葉

何とはなしに何やら床し菫草  芭蕉(なんとはなしになにやらゆかしすみれぐさ)
(か)編笠しきて蛙聴居る  叩端(あみがさしきてかはづききゐる)

花咲きて七日靍見る麓かな  芭蕉(はなさきてなのかつるみるふもとかな)
(お)懼て蛙のわたる細橋  清風(おぢてかはづのわたるほそばし)

菜の花や月は東に日は西に  蕪村(なのはなやつきはひがしにひはにしに)
(や)山もと遠く鷺かすみ行  樗良(やまもととおくさぎかすみゆく)

むめがゝにのつと日の出る山路かな  芭蕉(むめがかにのつとひのでるやまぢかな)
(と)処どころに雉子の啼き立つ  野坡(ところどころにきじのなきたつ)

曲水や江家の作者誰々ぞ  召波(きよくすいやごうけのさくしやだれだれぞ)
(も)唐土使かへり来し春  維駒(もろこしづかひかへりきしはる)

市中はもののにほひや夏の月  凡兆(いちなかはもののにほひやなつのつき)
(あ)あつしあつしと門々の聲   芭蕉(あつしあつしとかどかどのこゑ)

鳶の羽も刷ぬはつしぐれ  去来(とびのはもかひつくろはぬはつしぐれ)
(ひ)一ふき風の木の葉しづまる  芭蕉(ひとふきかぜのこのはじづまる)

箱根こす人もあるらしけさの雪  芭蕉(はこねこすひともあるらしけさのゆき)
(ふ)舟に焚火を入る松の葉  聴雪(ふねにたきびをいるるまつのは)

月見する坐に美しき顏もなし  芭蕉
(に)庭の柿の葉蓑虫になれ  尚白

しほらしき名や小松吹萩薄  芭蕉
(つ)露を見知りて影うつす月  鼓蟾(こせん)

めづらしや山を出羽の初茄子  芭蕉
(せ)蝉に車の音添る井戸  重行

すずしさを我やどにしてねまる也  芭蕉
(つ)つねのかやりに草の葉を焚く  清風

此梅に牛も初音と鳴つへし  桃靑
(ま)ましてや蛙人間の作  信章

風流のはじめやおくの田植歌  芭蕉
(い)覆盆子を折て我まうけ草  等躬(いちごをおりてわれまうけぐさ)

田の春をさすかに鶴の歩みかな  其角
(み)砌にたかき去年の桐の実  文鱗

文月や六日も常の夜には似す  芭蕉
(つ)露に乗せたる桐の一葉  左栗

秋の夜をうち崩したる噺かな  芭蕉
(つ)月まつほとは蒲団身にまく  車庸

あら何ともなやきのふは過きてふぐと汁  桃靑
(さ)寒さしざつて足の先まで  信章

箱根こす人もあるらしけさの雪  芭蕉
(ふ)舟に焚火を入る松の葉  聴雪

枯枝に烏のとまりたるや秋の暮れ  芭蕉
(く)鍬かたげ行人霧の遠里  素堂

この道や行く人なしに秋の暮  芭蕉
(そ)岨の畠の木にかゝる蔦  泥足

月見する坐に美しき顏もなし  芭蕉
(に)庭の柿の葉蓑虫になれ  尚白

五月雨をあつめて涼し最上川  芭蕉
(き)岸に蛍を繋ぐ船杭  一栄

あかあかと日はつれなくも秋の風  芭蕉
(お)晩稲(おくて)の筧ほそう聞ゆる  光淸

いささらば雪見にころぶ所まで  芭蕉
(す)硯の水の氷る朝起  左見

かくれ家や目だゝぬ花を軒の栗  芭蕉
(ま)まれに蛍のとまる露草  栗斎

有難や雪をかをらす風の音  芭蕉
(す)住程人のむすぶ夏草  露丸(ろぐわん)

温海山や吹浦かけて夕涼  芭蕉
(み)海松かる磯にたゝむ帆筵  不玉

生ながらひとつに氷るなまこ哉  芭蕉
(ほ)ほどけば匂ふ寒菊の菰  岱水

涼しさや海に入れたる最上川  芭蕉  
(つ)月をゆりなす浪の浮海松  不明    

かくれ家や目だたぬ花を軒の栗  芭蕉
(ま)稀にほたるのとまる露草  栗齊

古池や蛙飛びこむ水の音  芭蕉
(あ)蘆のわか葉にかゝる蜘の巣  其角

白菊の目に立てて見る塵もなし  芭蕉
(も)紅葉に水を流す朝月  園女

何の木の花ともしらす匂ひ哉  芭蕉
(こ)こゑに朝日を含むうぐひす  益光

ありがたや雪を薫らす風の音  芭蕉
(す)住みけん人の結ぶ夏草  露丸

秋ちかきこころのよるや四畳半  芭蕉
(し)しどろにふける撫子の露  木節

うぐひすや餅に糞する椽の先  芭蕉
(ひ)日は眞すくに晝のあたゝか  支考

あなむざんやな冑の下のきりぎりす  芭蕉
(ち)ちからも枯れし霜の秋草  享子

あづみ山や吹浦かけて夕すゞみ  芭蕉
(み)海松かる磯に畳む帆むしろ  石玉

旅人と我名よばれん初霽  芭蕉
(ま)亦さゞんかを宿々にして  由之

星崎の闇を見よとや啼く千鳥  芭蕉
(ふ)船調ふる蜑の埋火  安信

京まではまだながぞらや雪の雲  芭蕉
(ち)千鳥しばらく此海の月  菐言

麥生てよき隠家や畠村  芭蕉
(ふ)冬をさかりに椿さく也  越人

はつ龝や海も靑田の一みどり  芭蕉
(の)乘行馬の口とむる月  重辰

狂句こがらしの身は竹齋に似たる哉  芭蕉
(た)たそやとばしる笠の山茶花  野水

秣(まぐさ)負ふ人を枝折の夏野哉  芭蕉
(あ)靑き覆盆子(いちご)をこぼす椎の葉  翠桃

梅若菜まりこの宿のとろゝ汁  芭蕉
(か)かさあたらしき春の曙  乙州

芹焼やすそ輪の田井の初氷  芭蕉
(あ)擧りて寒し卵生む鶏  濁子

寒菊や粉糠のかゝる臼の端  芭蕉
(さ)提て賣行はした大根  野坡

八九間空で雨降る柳かな  芭蕉
(は)春のからすの畠ほる聲  沾圃

水鶏なくと人のいへばやさや泊り  芭蕉
(な)苗の雫を舟になげ込  露川

夏の夜や崩て明し冷し物  芭蕉
(つ)露ははらりと蓮の椽先  曲翠
 
龝もはやはらつく雨に月の形  芭蕉
(し)下葉色づく菊の結ひ添  キ柳

灰汁桶の雫やみけりきりぎりす  凡兆
(あ)あぶらかすりて酔寝する秋  芭蕉

つゝみかねて月とり落す霽かな  枯国
(こ)こほりふみ行水のいなづま  重五

木のもとに汁も鱠も櫻かな  芭蕉
(に)西日のどかによき天氣なり  珍碩

空豆の花さきにけり麥の縁  狐屋(そらまめのはなさきにけりむぎのへり)
(ひ)昼の水鶏のはしる溝川  芭蕉

振賣の鳫あはれ也ゑびす講  芭蕉
(ふ)降てはやすみ時雨する軒  野坡

雁がねもしづかに聞ばからびずや  越人
(さ)酒しゐならふこの此の月  芭蕉

霜月や鸛の彳々ならびゐて  家兮(しもつきやかうのつくづくならびゐて)
(ふ)冬の朝日のあはれなりけり  芭蕉

炭賣のをのがつまこそ黑からめ 重五
(ひ)ひとの粧ひを鏡磨寒  家兮(ひとのよそひをかがみときさむ)

はつ雪のことしも袴きてかへる  野水
(し)霜にまた見る蕣の食  杜國(しもにまたみるあさがほのしょく)

牡丹散て打かさなりぬ二三片  蕪村(ぼたんちりてうつかさなりぬにさんべん)
(う)卯月廿日のあり明の影  几董(うづきはつかのありあけのかげ)

夕風や水青鷺の脛をうつ  蕪村
(が)蒲二三反凄々と生ふ  宰馬

舂くや穗麦が中の水車  蕪村
(か)片山里に新茶干す頃  几菫

罷り出たるものは物ぐさ太郎月  蕪村
(な)南枝はじめてひらく頭取  杜口

冬木だち月骨髄に入る夜哉  几菫
(こ)此句老杜が寒き膓  蕪村

曲水の江家の作者誰々ぞ  召波(きよくすいやごうけのさくしやだれだれぞ)
(も)唐土使かへり來し春  維駒(もろこしづかひかへりきしはる)

月に漕ぐ呉人(ごびと)はしらじ江鮭(あめのうを)  蕪村
(あ)網干(あぼし)にならぶ苫の秋され  暁台

うぐひすや茨くゞりて高う飛  蕪村
(や)山田に鋤を入るゝ陽炎  几菫

秋もはや其蜩(そのひぐらし)の命かな  蕪村
(く)雲に水有り月に貸す菴(やど)  宋屋 

薄見つ萩やなからん此辺り(このほとり)  蕪村
(か)風より起る秋の夕に  樗良 

花の雲三たび重ねて雲の峯  蕪村
(す)涼しき時におもひ出す陰  麗水

泣(なき)に来て花に隠るゝ思ひかな  蕪村
(つ)露の宿りを訪ふさくら人  しげ

具足師(ぐそくし)のふるきやどりや梅花(うめのはな)  蕪村
(け)下駄の歯がたの残る下萌え  几菫

身の秋や今宵をしのぶ翌(あす)も有(あり)  蕪村
(つ)月を払へば袖にさし入(いる)  月渓(げっけい)

名月を取ってくれろと泣子かな  一茶
(こ)小銭ちらばる茣蓙の秋風  露月

味(うま)さうな雪がふうはりふうはりと  一茶
(み)見ずに値段の出来る黑鴨  素外

夕暮や蚊が啼き出してうつくしき  一茶
(す)すゞしいものは赤いてうちん  一瓢

松陰に寝てくふ六十余州かな  一茶
(つ)鶴と遊ん(あそばん)亀とあそばん  鶴老

あつさりと春は来にけり浅黄空  一茶
(に)西に鶯東(ひんがし)に雪  希杖

此上の貧乏まねくな花芒  一茶
(な)鍋も茶釜も露けかりけり  文虎

蚤飛べよおなじ事なら蓮の上  一茶
(す)すゞみ筵に入相の月  希杖

じつとして馬に齅(かが)るゝ蛙かな  一茶
(た)盥の中に遊ぶ雀子  文虎

上の上極上赤の木の葉かな  一茶
(む)麦蒔てから用のない里  梅塵

人の世は砂歩ても蚤うつる  一茶
(く)雲の峰より生ぬるい風  雪路 

此やうな末世を桜だらけ哉  一茶
(い)今やひがんとほこる鶯  文虎




  
   
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