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歌仙 [つばくらめ歌仙]

      つばくらめ歌仙 『山独活の巻』          起首 令和三年三月一日

表六句
発句    山独活や悔い多き日も暮れかゝる  律子
脇     明日は天婦羅大根おろし      夏霜   
       
       今日は「悔い多き日」だったが、明日は明日の風が吹く。
       独活は天麩羅もおつなもの。(野草)
      「ウ」(暗)から「ア」(明)の音相へ。
       蓼科山中で採った独活を生味噌で齧ったことがある。
       えぐみ、苦み、コリコリの歯ざわり。思い出の味。(黙狂)

第三    久しぶり子供も孫も集まりて  野草
      
       一族揃って好物は天麩羅。(野)
       残りは夜食の天むすに。(黙)

四句目   寝息うかがふ乾杯の音  黙狂
      
       大人は乾杯、孫は昼寝。(野)
       実は子供らもひそかにジュースで乾杯している。(黙)

月の定座  月影に夜逃げとげたり裏長屋  德海
      
       夜逃げして乾杯とは、能天気。(野)
       事が上手く運んだ。取り敢えず自販機の缶ビールで月に乾杯。(黙)

折端    人の情けと秋刀魚の匂ひ  流水
       
       裏長屋に秋刀魚。逃げた先は庶民の人情味溢れる長屋だった。(野)
       鰻の蒲焼ならぬ路地で秋刀魚を焼く匂いをおかずにして。(黙)       

裏十二句 
折立    気がつけば棺より見るお月さま  結
       
       江戸の雰囲気。何か落語にあったような。(野)
      「粗忽長屋」の八五郎。原話は絵本噺の「水の月」だそうだ。(黙)

二句目   思ひ返せば今も動悸が  律子
      
       臨死体験の記憶。(野)
       前世も今世もたいして変わらない。恋の呼び出し。(黙)

三句目   冗談半分に愛を告白片思ひ  半眼  
       
       大胆な字余り。動悸は初心さ故。それが懐かしい。(野)
       真剣になるほど冗談と思われる。そんな経験したことない?(黙)

四句目   さらりと流しお抹茶立てる  夏霜
       
       濃厚な愛から寂びた風情に。(野)
       失恋は薄茶のようにさらりと忘れた。(黙)

五句目   床の間に雪舟ならぬフェルメール  野草
       
       この茶人、洋の東西を問わぬ趣味人らしい。(野)
      「真珠の耳飾りの少女」が、口元にかすかな笑みを湛えて、
       もの欲しそうに見つめている。恋の名残。(黙)

句目   街に繰り出すネズミ大群  德海
       
       前句の高尚・清閑に付句の平俗・騒擾の対照。(野)
       ひと気のないコロナの街は鼠どもの天国。(黙)

月の定座  巣籠りの月を相手の生ビール  黙狂
       
       普段は籠もっているはずの鼠は外に、主人は内に。(野)
       コロナ下の熱帯夜に耐え切れず、コンビニへビールの買い出し。(黙)

八句目   蛍飛びかふ川辺に立ちて  結
       
       難解。泡に反射する光に触発された回想句か。(野)
       冷たい生ビールを干すと目の中に蛍がチラチラ。飲み過ぎ。(黙)

九句目   釣りキチのねらひは淵の岩魚かな  流水
       
       夜釣りの風景だった。(野)
       このシルエットは蛍狩りならぬ岩魚狩り。(黙)

十句目   擦れた魚にまた為てやられ  半眼
       
      「ねらひ」に「為てやられ」が呼応。(野)
       淵の主人・岩魚に遊ばれている。(黙)

花の定座  鯛買ひて春惜しみつつ白ワイン  律子
       
       釣は坊主。でも魚屋で仕入れて帰ればいいさ。(野)
       海老ならぬ幻の岩魚で鯛を釣る。白身魚には白ワイン。
       魚の句が三つ続き生臭くなった。(黙)

折端    瞼も頰も散る花の色  野草
       
       鯛のみならず、花見する酔人の顔も花の色。(野)
       白からロゼへ。そして赤い顔に。花の定座がひとつずれた。(黙)

名残の表十二句
折立    連れ添ひて吉野の山の葉桜に  夏霜
       
       花見で見初めた人を葉桜見物に誘った。(野)
       デートには満開の吉野より葉桜の吉野。二人だけの暗闇の世界。(黙)

二句目   両手を振りて見送るホーム  結
       
       両親の銀婚旅行か何かを、それをプレゼントした子供が見送る情景か。(野)
       デートの相手は地元・吉野村の人だった。(黙)          

三句目   いたはりし情が憂しと去り行くか  半眼
       
       深い情けが重荷となることもある。前句を、別れの場面と見定めた。(野)
       何事もスープの覚めない仲が宜しい様で。(黙)

四句目   秘蔵の絵画競り市にかけ  黙狂
       
       これも難解。自分が売っておきながら絵画の方が「去りゆく」と洒落たか。(野)
      「オランピア」を手放すマネ、「モナリザ」を手放すダヴィンチ。
       二人の心境を邪推して。(黙)

五句目   手拍子の売り手と買い手酉の市  流水
       
       カタカナのオークションから卑近な市に。(野)
       手拍子がはいると、銭を掻き寄せる熊手になる。(黙)

六句目   木枯に舞ふ札のかずかず  德海
       
       市で商われる品の値札か、名札か。(野)
       木枯の酉の市の空にはいろんな「札」が舞っている。花札までも(黙)

七句目   たなぼたの叔父の遺産の振り込まれ  野草
       
       「札(ふだ)」ならぬ「札(さつ)」。(野)
       木枯しが棚からボタ餅ならぬ札束を吹き落とした。(黙)

八句目   車を買ひてあの隠れ家へ  律子
       
       たなぼたで念願の車入手。大人の秘密基地とも言うべき「隠れ家」に。(野)
       これからはいつでも愛車に乗って。恋句(黙)

九句目   紅梅の仄かにかほる枕元  夏霜
       
       隠れ家は山里だった。(野)
       観梅の愛車が紅梅の香をそのまま隠れ家の寝室へひきずって。恋句。(黙)

十句目   読経のひびく白き天井 結
      
       「枕元」は死の床だった。(野)
       紅梅の香と白い香煙の取り合わせ。(黙)

月の定座  照らされて満たされてをり月明り  半眼
       
       浄土の風景。(野)
       池に反射する月影が本堂の天井に揺れている。月陽炎。(黙)

折端    紅葉の城に舞ふ白虎隊  黙狂
       
       月明かりの下、御前で舞う。(野)
       鶴ヶ城内での剣舞。白鉢巻の若者たちは月影に生き生きと輝いている。(黙)

名残の裏六句
折立    車座に新蕎麦啜るタリバン兵  德海
       
       現代の白虎隊とも言うべきタリバン。
       ソバはユーラシア大陸各地の食文化に生きている。(野)
       戦の砂漠で蕎麦を啜るには安心安全な車座しかなかろう。(黙)

二句目   幼さ残す少年もゐて  夏霜
      
       観音開きの気味もあるが、前句と付句一体で前々句に付けたと見れば、
       これもありか。(野)
       少年兵は車座の外で敵の見張り役。(黙)

三句目   白秋や水透き通るガラス瓶  律子
       
       少年の肌のイメージ。(野)
       平句では切字はご法度。「の」にすると平句にはなるが。(黙)

四句目   酒くみかはす見知らぬ同志  結
       
       君子の交わりは水のごとし。
       なればこそ「見知らぬ」者も気が合えばすぐ「同志」となる。(野)
       透き通った水のような酒といえば、銘酒「上善如水」。(黙)

花の定座  忘るなよ今月今夜の花盛り  野草
       
       一期一会。(野)
       芭蕉に「命二つの中に生たる櫻哉」
      「さまざまの事おもひ出す櫻かな」あり。(黙)

挙句    さも賑やかに朧夜の宴  流水
       
       前句「忘るなよ」の勢いが力強い「さも」で受けとめられている。
       「悔い多き」ではじまった本巻も「宴」で目出度く満尾。(野)
       夢まぼろしのごとき人生。だからこそ「さも賑やかに」。
       挙句らしく後味よくあっさりと付けた。(黙)
 
                             満尾 令和三年八月二十日 
 

つばくらめ歌仙『白露の巻』     起首 令和二年八月十九日

水門の細き流れの白露かな     結
よくぞ続きし句座二百回      黙狂
 水とともに時流れ、気がつけば我が「つばくらめ」も二百回を数える。(野草)
 二百回目は白露の頃の浜離宮吟行。細き流れのような句会だからこそ続いたのだ。(默狂)

よくぞ続きし句座二百回      黙狂
今日もまた坊主だったと月を見て  野草
 二百回の内にはそんなことも何回か。(野)
 佐太郎の坊主の句会冬うらら 夏霜。あの上大岡の「花里」も店を閉めたそうだ。(默)

今日もまた坊主だったと月を見て  野草
古りし詩嚢を繕ふ夜なべ      徳海
 売れない老詩人、推敲に余念がない。(野)
 選に漏れた句の何と多いこと。とは言え、わが人生の消せない軌跡。捨てられぬ。(默)

古りし詩嚢を繕ふ夜なべ      徳海
酒の座のマナー守れよ花の下    柚
 夜が更けるに連れ乱れていく。(野)
 お花見時の運座で先輩に叱られた一句に似ている。これも落選。(默)

酒の座のマナー守れよ花の下    柚
実梅ころころ海辺の街よ      流水
 花が実となる。(野)
 これは早春の鎌倉句会。梅の実が海坂を転がる。そう言えば、腰越の満 福寺は燃えてしまった。昼に食った大盛生シラス丼が懐かしい。売店には大きな猫もいた。(默)

実梅ころころ海辺の街よ      流水
花曇り外人墓地の鐘の声      夏霜
 海辺の街とは横浜山手あたりだった。(野)
 フェリスの生徒たちのコロコロと転がるような笑い声。教会の鐘の音もまた。(默)

花曇り外人墓地の鐘の声      夏霜
万国公法懐中に秘め        黙狂
 開国か攘夷か、幕末の雰囲気。(野)
 戦争か外交か、今に通じる。国際法に従わない国もあるが。(默)

万国公法懐中に秘め        黙狂
出航の汽笛づ太し雲の峰      半眼
 これは龍馬だろう。(野)
 泰平の眠りを覚ます上喜撰たつた四はいで夜も寝られず。今は一杯でも。(默)

出航の汽笛づ太し雲の峰      半眼
夏惜しみつつ振り返る海      律子
 雲の峰も崩れ、残る思い。(野)
 小さな胸に深呼吸。初秋の海風は青春の匂い。(默)

夏惜しみつつ振り返る海      律子
巻き貝に耳を澄まして暮れなずみ  野草
 巻き貝は追憶のイメージ。(野)
 私の耳は貝の殻/海の響きをなつかしむ  ジャン・コクトー(默)

巻き貝に耳を澄まして暮れなずみ  野草
地図を片手に旅の支度で      結
 気を取り直して、秋は新たなる旅行シーズン。(野)
 さて、元気なうちに奥の細道の旅へ…と思いつつ今日まで来てしまった。(默)

地図を片手に旅の支度で      結
駅弁のおかず交換ロマンスカー   徳海
 旅は恋の始まり。(野)
 実は、芭蕉は意外に手がはやかったという説がある。(默)

駅弁のおかず交換ロマンスカー   徳海
ワイングラスに届く月影      黙狂
 宿のベランダの情景。(野)
 現代の芭蕉は、その時のために、心とろかすワインを旅行鞄にひそませているのだ。(默)

ワイングラスに届く月影      黙狂
栗飯をおひつに移す香りかな    流水
 恋の逢瀬から家庭的情景へ。(野)
 恋の成就。新妻のエプロンとお櫃を覆う布巾が清々しい。(默)

栗飯をおひつに移す香りかな    流水
母の味恋ふ秋の胃袋        柚
「香り」の行き着く先は「胃袋」。(野)
 所詮、人間は頭脳ではなく、胃袋で思考、思慕する。(默)

母の味恋ふ秋の胃袋        柚
一人娘蝶よ花よと育てられ     野草
 箱入り娘、初めてのひとり暮らし。(野)
 三度の飯はすべてコンビニ。(默)

一人娘蝶よ花よと育てられ     野草
春の曙アメリカに飛ぶ       夏霜
 そういう猛者のような娘子が明治大正にもいたのだった。(野)
 津田梅子は明治四年、満六才で岩倉使節団に随行し渡米した。たいしたもの。(默)

春の曙アメリカに飛ぶ       夏霜
パリからのショコラが香る春の宵  律子
 アメリカがパリ、「曙」が「宵」に。(野)
 春宵はニューヨークよりパリ。ピアフのシャンソン・「愛の讃歌」も聞こえて来る。(默)

パリからのショコラが香る春の宵  律子
正午の汽笛氷川丸より       黙狂
 そして「正午」(以上三句観音開きの気味があるが、これはこれで面白い)。(野)
 横浜・ニューグランドホテルで元祖ナポリタンを食って、お土産にはショコラ。(默)

正午の汽笛氷川丸より       黙狂
ひとり酒しばし酔ひたり冬の月   結
 独酌の耳に汽笛が聞こえてくる。(野)
 昼下りの山下公園のベンチ。ロング缶を空にして、いざ野毛の居酒屋へ。(默)

ひとり酒しばし酔ひたり冬の月   結
裳裾を濡らす逢坂の関       徳海
 難解。独酌の主の回想風景か。(野)
「夜をこめて鳥の空音ははかるともよに逢坂の関はゆるさじ」。清少納言の返歌に、藤原行成の自棄酒。(默)

裳裾を濡らす逢坂の関        徳海
緑なすポニーテールの腰に触れ    野草
 裳裾のなす曲線、髪から腰に至る曲線。(野)
 現代版、清少納言の色気。(默)

緑なすポニーテールの腰に触れ    野草
秋の陽ざしに微かな匂ひ       夏霜
 それは緑髪の匂い。(野)
 エンジェル・リングを輝かせながら、少女が駆け抜けて行く。(默)

秋の陽ざしに微かな匂ひ       夏霜
コロナの地球月のウサギは哀しみぬ  柚
 陽はやがて落ち月が出る。(野)
 兎は、お釈迦様にわが身を捧げたので、「月の兎」となって昇天した。欲に溺れた人間どもよ。猛省せよ。(默)

コロナの地球月のウサギは哀しみぬ  柚
外出控へ亀甲羅干し         半眼
「ウサギ」に対するに「亀」。(野)
 亀は万年、コロナは億年?人間はウイルスと上手に共生するしかない。(默)

外出控へ亀甲羅干し         半眼
小春日に猫のもふもふ会ひに行く   夏霜
 巣籠もりに飽き「甲羅」にも飽き「もふもふ」を求め外出。(野)
 浅草に猫カフェあり、兎カフェあり。梟カフェも。コロナ下、やっているのだろうか?(默)

小春日に猫のもふもふ会いに行く   夏霜
子のてのひらに母の肌合ひ      黙狂
「もふもふ」を求めるのは母の感触故だったか。(野)
 猫の肉球を弄ぶのを肉球フェチというそうだ。マザコンの一種か。(默)

子のてのひらに母の肌合ひ      黙狂
南風吹く帽子をかぶる犬の像     結
 この犬は作者が乳離れしたころからの愛犬だったのだろう。(野)
 帽子どころかマスクまでして。(默)

南風吹く帽子をかぶる犬の像   結
コロと呼んでも尻尾は振らず   野草
 犬の像は在りし日のコロに姿形似ているのだが動くことはない。(野)
 コロはコロナに通じるからか。そっぽを向いたまま。(默)

コロと呼んでも尻尾は振らず   野草
便りなく金も送らず切れ目時   徳海
「呼んでも」「便りなく」、「(袖も)振らず」「金も送らず」だ。(野)
 金の切れ目が縁の切れ目。そんな若い頃の苦い思い出がある。(默)

便りなく金も送らず切れ目時   徳海
そのうちいつか訪れる客     律子
 ぱったり音沙汰ない。コロナ禍、店長も開き直っている。(野)
 待てば海路の日和あり、とは言うものの何かいい手を考えねば。(默)

そのうちいつか訪れる客     律子
ホステスはみな羅に肌を見せ   黙狂
 その店はキャバレーだと見立てた。(野)
 昔のやり方ではダメ。写真入りで、どんどんツイートしなきゃ。(默)

ホステスはみな羅に肌を見せ   黙狂
手を取り行かむ浅草祭り     夏霜
 明日行こうと夜の女を口説いているが、はて。(野)
 コロナ禍で三社祭もやらぬ。せめて恰好だけはと、少し片肌見せて。(默)

手を取り行かむ浅草祭り     夏霜
座してより眸やさしき花のもと  半眼
 口説きは成功したらしい。夜の女も昼の花のもとでは「眸やさしき」こともある。(野)
 墨堤の満開の桜の下。酔眼には、向島の芸者衆は皆「眸やさしき」である。(默)

座してより眸やさしき花のもと  半眼
囃すやうなり蝶の羽ばたき    野草
 植物界も動物界も、そして人間も、春を楽しんでいる。(野)
 夜の蝶、昼の蝶、皆、踊りながら日本の春を謳歌。歌仙もまた芽出度く満尾。(默)

                     満尾 令和三年二月二十日


つばくらめ歌仙 「蛤の巻」
            起首 令和二年三月二十六日

蛤の無言の語り尽きもせず          半眼
のどかに暮れて春星ひとつ          佐太郎
遠足は馬の埴輪の眠る地に          野草
風のまにまに花びら拾ふ           律子
母の影踏んでうれしき月の道         流水
野川に沿ひて匂ふ秋草            結
ころがる零余子女生徒の爪先に        和子
ポストに走るルーズソックス         德海
転校生去つてつのるや片思ひ         半眼
会ひに行きたし夜汽車に乗つて        夏霜
新橋の汽笛一声高らかに           柚
膝に置きたる温き弁当            默狂
とりあへずひと口すするワンカップ      默狂
ビルの向うに月の涼しく           野草
蝙蝠のいづくにゐるや無縁寺         律子
敵は新型コロナウイルス           流水
しなやかに踊る女人の白き腕         結
京の花愛で北へ追ひ行く           和子
桜餅スマホ頼りに向島            德海
仕舞屋の路地行く春ショール         半眼
銀座まで軒の紫陽花右ひだり         夏霜
初めてつなぐ手の温もりよ          柚
一弾で民族の和の弾け飛ぶ          默狂
百を下らぬ白鳥の群             野草
あのひとの笑顔が欲しく寒稽古        律子
汗を拭ひて眼と眼で語り           流水
山頂で指輪を交はし婚約す          默狂
夢に浮びて夜も眠れず            結
朝ぼらけ紫の雲のたなびく          和子
霊柩車借り西へドライブ           德海
ステイホームと波打ち返す月の浜       半眼
秋風清し嵯峨の竹林             夏霜
台風よ恋の深傷を吹き飛ばせ         柚
木の芽明りに読書三昧            默狂
ひとひらの花の頁に散りかかり        野草
空を仰ぎて残り香を吸ふ           律子
             満尾 令和二年八月十二日


つばくらめ歌仙  「春トマトの巻」

サンドイッチにはみ出してをり春トマト    柚
どーっと花咲くみちのくの里         夏霜
ひとり座り涙なみだのスクリーン       結
チャイム鳴りてもやりすごしつつ       野草
月おぼろ手さぐりで出る裏の木戸       律子
懐重し縁起がいいや             德海
舟で行く大川端の花月夜           和子
雪見障子は閉ぢられしまま          默狂
宵闇や値千金台場まで            佐太郎
今こそ行かん杖を頼りに           半眼
めでたさや金婚の日の天高し         流水
君を好き好きわれを残すな          柚
秋日和今宵は何処へ泊ろうか         夏霜
振り向き見れば麗しきひと          結
山茶花の坂を登れば海の宿          夏霜
馴染みの仲居白髪増えて           德海
買ひ替へる花見むしろや新社員        律子
胸のラスター春風に揺れ           野草
缶珈琲初夏のビル街連れ立ちて        和子
香水仄とブラウスの襟            默狂
ツバメ二羽眼にして弾むウォーキング     佐太郎
走り追ひ抜く下校の生徒           半眼
空は青く大地に銀杏落葉かな         流水
小判きらきら舞落ちるかに          柚
千両に薄日当りし庭の隅           夏霜
待ち人来たる小川のほとり          結
うつむきし渡しをめざす逃避行        德海
逃げても先は吉とは出でず          律子
サンダルの舞ひ上がる空宵の月        野草
まだかまだかと幕開きを待つ         和子
寄り添ひし伽羅の香りの仄かにも       默狂
気短者ぞ花も待たぬは            和子
寒空へ口笛吹いて孤独なり          半眼
狂ひ咲きさへあると言ふのに         柚
待ち人の肩にほろほろ里桜          結
はるか地球へはやぶさの旅          流水




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